地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

ありふれたGUIを捨てる時

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 アプリケーションを作成する上で非常に重要な要素の1つにユーザーインターフェイスがあるかと思います。使い勝手に直結する部分のため、非常に頭を悩ませているところであり、全国のSEの方たちも、物凄く気を使って考えているところだと思います。

 ユーザーインターフェイスは時代にあわせて進化を続けています。それは入力デバイスの進化とほぼ同じ時系列で進んできているように思えます。最初のころはキーボードがメインでしたので、「いかに入力しやすいか」という点に主眼をおいたデザインであったと思います。それがマウスが主流になり、「いかに選択しやすいか」という点へと変化していったのではないでしょうか。ただどちらにも共通しているのは、あるデバイスを利用して適切に楽に入力を行えるもの、というのが基本であったと思います。

 今でいうGUIが全盛になる以前は、キャラクタベースのUIが主でした。そのため「選択する」という操作方法はほとんど存在せず、「入力する」という方法がほぼ全てであったかと思います。業務用アプリケーションはこの時代から盛んになってきたこともあり、今でも業務用アプリ=キーボード入力、というのが主流であるかと思います。

 業務用アプリケーションに対して個人用アプリケーションは、Windows 3.1などマウスが主流になってから盛んになった背景もあり、キーボードもマウスもどちらも有効に利用するアプリケーションが多いように見受けられます。

 特に顕著なのはゲームの世界ではないでしょうか。ゲームの世界ではとにかく視認性や操作性を重要視することもあり、ユーザーインターフェイスというのはかなり洗練されている分野となっています。物によってさまざまではありますが、基本としてはシンプルにわかりやすくそして直感的に操作が行える、この道を突き詰めていったものと思います。

 わたしは仕事柄、業務用システムを構築するのを主にしていますのでどちらかと言わなくとも、キーボードで入力するものがシステムだ、という思い込みがあります。ですがここ最近の進化を見ていると、その考え方に違和感を感じてきているのです。

 言ってしまえば「何だか使いづらい」。世の中に多数存在する色々なアプリケーションを触った後、既存の業務システムは何と言うか使いづらいのです。

 今の時点での個人的な(多分に思い込みを多々含んだ)気持ちとしては、「業務用アプリケーションのGUIは殆ど進化していない」というところです。10年と少しという短い間しかわたしは業務用アプリケーションの世界を見ていないので、「何を言っているんだこの若造が」と思われるでしょうが、コンピュータという物に触れ続けてきた人間としての率直な感想です。業務以外のWeb系やモバイル系と比較すると、その差は明らかだと思えるのです。

 「キーボードで入力することだけが本当にベストな方法なのか」

 「何故キーボードで入力しなければならないシステムなのか」

 これまでは「業務だから」というのを言い分にして、どうも正面から考えることがあまりなかったような気がしています。もちろん独創的なアイデアを持ってシステムを構築する企業もありますので、全てではないのは承知しています。ですが大半の企業ではどこも同じようなシステムを構築しているのが現状ではないでしょうか。カタログやWebサイトなどでのスクリーンショットを見ても、どこも似たような感じに思えてしまいます。

 別にわたしはキーボードでの入力を捨てろ、というつもりはありません。キーボード入力は必須だとさえ思っています。ただし、メインでの入力方法ではなくなってきていると思えます。

 キーボードは基本的に「直感的なデバイス」ではありません。マウスやタッチパネルなどのデバイスに比べると、どうしても利用することに障壁があると思います。もし直感的なデバイスで業務を運用することができたら。それは素晴らしいことだと思えませんか?

 利用する側にとって、とても利用しやすいシステムになることと思います。

 本当に使いやすく理解しやすいシステム、そこを本気で考えた際に同じ答えになるのであれば、それでいいでしょう。ですがiPhoneでも業務用アプリを構築するところが出たなど、時代は着々と進化し続けています。気がついた時には取り残されていた、などということの無いように、今からでも考えてみるのがいいのではないでしょうか。

 ……もちろんわたしはどうすればいいかわからないので、必死に考えないとアイデアがないのですがね。

Comment(8)

コメント

インドリ

同感です。近い将来ブレインインタフェースになると思います。
ほかにも音声認識、バーチャルリアルティ、指揮棒・・・など
位置情報さえ分かれば何でもいいと私は常日頃思っています。

友ぞう

こんにちは。友ぞうと申します。

業務アプリはキーボード入力が主流というのはよくわかります。
私自身もそのような先入観がありますね。
今のデバイスではそうならざるを得ないという部分もあります。

業務アプリの主流は名前や品名などの文字入力と圧倒的な数値入力がほとんどですよね。そうすると、入力デバイスがキーボードとマウスしかない以上はどうしてもキーボード主流になりがちですよね。特に、キーボードとマウスを所々で持ち帰る動作が流れを遮断するため、キーボードだけで操作できるようになりがりです。

今回読ませていただいて、確かに文字入力などがキーボード以外で直感的にできるとしたら断然使いやすくなるはずですよね。ただ、それが何かはわかりませんが。

社内システムを構築していまして、私はいつもの先入観からキーボードからのコード番号入力を主流とした設計をしていました。
先日、営業の方に見せたら、自分たちは照会が主流だからキー入力でなくマウス操作を主流に考えてほしいといわれました。コードなんて覚えているわけないので、
マウスで「ピュッ」と操作したいと。

業務アプリの当たり前と思っていて進化していなかったのは使い手ではなく作る側の自分かもしれませんね。

Ahf

インドリさんコメントありがとうございます。

続々と現れる新しい技術でUIもどんどん進化していってますよね。
音声認識とかは結構一般向けにも適用されてきていますしね。
GPSも一般に利用されていますし・・・。

こう思うと技術の利用方法を考えついた人がこれからをリードすることができそうです。

Ahf

友ぞうさんコメントありがとうございます。

「当たり前」と思っている部分というのは私も多々持ってしまっています。
ユーザーからすると「?」という点は、時代が進むに連れて増えてきているような気もしますね。

キーボード入力以外の方法、となるとRFIDなどの無線系とOCRなどの認識系がさらに発展してくれるといいなぁ、と私は思っています。社員証とかで無線タグ関係は使われ始めていますからこっちの方が使いやすそうですかね?

三年寝太郎

こんばんは。

直感的に操作できるということは、慣れていなくても使えるということで、言い換えると、誰が使っても、つまりデータベースやアプリケーションといったツールの基本的理解が有る人が使っても、それが無い人が使っても、同じアウトプットが可能。ということでしょう。
そこから無理やり話を進めると、ちょっと乱暴ですが、低コストな人員でも扱えるもの。と言うことにもなりますね。
実は、経営者サイドの判断基準としては、その点が重要な場合もあったりするもしれません。
本当は、全て機械的、自動的に処理できれば言うことなしなのでしょう。
しかし、ITはまだまだ人が使う"道具"の域をでていません。人が介在しなければアウトプットはおろかインプットもままならないのが大半というのが現状ですし、それが、例えば大工道具の様に、何年もかけて失敗を繰り返し、厳しい指導を受けて習得し得るものなのか、それとも、小学生でも扱える包丁なのか、という違いは重要なのかもしれません。

UIの使い勝手は作業の能率や効率にも影響が及ぶため非常に重要だと思います。
なるべく直感的に操作できた方が良いのかもしれませんが、ソフトウェアは、人が使うものであり、そして人はミスをするもの、という前提に立つと、そのソフトウェアを始めて使う人でも迷わず、簡単に操作が出来るものを作ろうと思うと、相当に考え抜かれたエラー回避の仕組みが必要になります。

ジェイコム株の発注ミスが一例である様に、単純な入力ミスが驚愕に値する損失をもたらしますし、組織の存続が危ぶまれる事態に発展する可能性も秘めています。
また、コスト面から考えると、あらゆる事態に対応したエラー処理は実現不可能な場合が殆どでしょう。
それらを考慮するとやはり、ある程度の縛りというかルールというか、利用するためには一定の型や制限を設ける必要があるので無いでしょうか。
経験、権限、責任能力、といった基準でふるいにかける必要があるでしょうし、ミスが起き易い部分を予め隠すため、或いはミスが起きた場合に影響を抑えるための制限をかけることもあるでしょう。

もちろん、なるべく使いやすいように作るのがユーザに対しての思いやりだったりするのですが、自由度が高いがエラー処理が甘いUIを使って、ちょっとしたミスで大きな損失を出してしまったとしたら、ミスを犯した人はエンジニアの理想の為に責任を感じてしまうことになるかもしれません。

人は、ある程度の制限がないと、ミスも増えるし悪い意味での"好い加減"や"適当"にもなるし、或いは悪意の入り込む隙間も出来てしまいますから、多少の不便を強いてでも、セーフティやセキュリティを含めた規律や秩序を確保した方が、結果的にユーザのためではないかとも考えられます。
文明とは秩序が具現化されたものだと思うので、その前提で極論を言えば、ルール(=最低限の秩序)があった方が実は人は幸せなのではと思えるケースの方が多い様にも思います。

利便性、簡便性、安全性、そしてコスト。その全てを満たすのは不可能かもしれません。
それでも、その中でどこを重視して作るか、どんなバランスで作るか。
特にコストと安全性を考えた場合、使いやすいかどうか以前に、操作を許す、許さないといった点から、制限を設けていくのが普通ですし、それは必要に迫られてのことだと思います。

制限を設けると使い勝手の低下は免れないのですが、その代わり、コストと安全性は一定の範囲で確実に実現できる。そういったトレードオフの関係にある場合が殆どだと思います。
それを考えるのも実際に物を作るのもエンジニアの仕事ですから、悩まずにはいられませんね。


作る側の都合で物を作ってないか?将来を考えたときにそれで良いのか?
このコラムでAhfさんがおっしゃりたいことは、恐らく、そこが主題でしょうか。

経験や技術力の不足を理由にするならば技術者としての矜持が問われますし、、挑戦する意欲、使う人への思いやりの不足、さらには保身であったり、単に面倒だからといった理由であれば、技術者として以前に問題がありますね。
それらが原因で業務用アプリのUI変われていないのであれば、仕事を引き受けた"つもり"の人の怠慢なのかもしれません。

仕事が人に喜ばれる為の努力であるなら、そういう取り組み方は避けたいですね。
それも結局は自尊心の為なのかも知れないのですが。

Ahf

三年寝太郎さん、長文コメントありがとうございます。
今回もしっかりと読ませて頂きました。

経営者側の判断基準としては実際にそのような考え方をされる方が増えているのは、私もそう思います。事実今メインの案件がそのような考え方をされる経営者だったりします。

ルールがある方が~、というところはよくわかります。
どのような物でも同じだと思うのですが、万人に適用できる物は無いと考えますし「複雑で多機能」と「シンプルで機能不足」も、利用する人によって有効に活用できるかどうかが変わってくる物だと思います。対象となる企業の中で、どこに着地点を決めて作るのかがSEとしての仕事であると思いますね。

怠慢と思える技術者は、やはりまだまだ多くいるように思えてしまいます。

sumeshi

一つアイディアですが、紙の資料をもとに入力する業務システムも多いと思います。OCRがだいぶ発達してきたようなのでスキャナから入力できたら楽かな~と思いました。勿論誤入力を補正する入力画面も必要ですが。

Ahf

sumeshiさんコメントありがとうございます。

OCRによる入力、いいアイデアだと思いますよ。
特に伝票入力系は大体が「印字されたもの」を相手にするか、EDIなどのデータが相手となるものが多いと思いますから、意外に構築しやすいかも知れませんね。

一度本当に考えてみると面白いと思います。

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