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我がエンジニアライフに悔いなし? -第4話(後編)

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第4話 後編 悪は滅びない

 前編の続きです。

 

■1年後の会社

 (故浦見君の独白)

 フフフ、やはりブラックシステムはつぶれたか。あのビルに違う会社が入っている。あれ? この会社は。

 『ダークグレーソフト株式会社 代表取締役 織田偉寛』

 社長は部長だった織田さんか。もしかして、会社の名前が変わっただけ?

 「越後部長、例のソリスギシステムのモジュール開発は間に合いそうか? 来週のオペレーションNN作戦で使用されるのだろう」

 「織田社長、遅れてはいますが心配はありません。とりあえずはできているものをリリースさせます。一部のソースはダミーですが、初回はそこまでは使われないはずです」

 「大丈夫か?」

 「機能を追加して随時リリースすることになっているので分かりませんよ。あのプロジェクトは機密性が高いのでソースを見ることができるのはほんの一部の人だけですし」

 「うちのモジュールが動かなくて戦士が負傷したなんてことになったら一大事だぞ」

 「万一なにかがあっても、うちは3次受けです。2次受けのDosグロソフトがうまくごまかしてくれるでしょう」

 「うむ。Dosグロソフトには、税務署の件でたっぷり貸しを作ってあるしな」

 越後さんが部長になったのか。でもなんか危なそうな会社だなあ。

 

■突然の赤紙

 「えっー、越後部長、私にゾンビがいるあのZ地帯に行けと?」

 「クライアントの強い要望なんだ。最も優秀な技術者を派遣してほしいと。オペレーションNN作戦はZ地帯で行う。でも仕事は指揮車両の中でシステムを見守るだけだ。回りは兵士たちに守られているから、指揮車両が爆破でもされない限り安全だ。それに万一ソリスギシステムを現地で修正することになったら、短時間で修正できる優秀な技術者は鳴山君しかいないじゃないか。他の人が行ったら時間がかかって危険だ。君にしかできないんだ」

 「そ、そうですかね」

 「鳴山君の技術力は織田社長も高く評価している。それに茶色い目の美人兵士と仲良くなれるかもしれないぞ。頼んだぞ!」

 「は、はい」

 えー、鳴山君があのZ地帯に行くんだ。大丈夫かなあ?

 

■エンジニアを説得するには

 「越後部長、Z地帯への現地派遣者は決まったか?」

 「織田社長、鳴山に行かせることにしました」

 「なにしろZ地帯への派遣は破格の仕事だ。1人と言わず、5人でも10人でも出したいところだ。プログラマーの代えはいくらでもいるが、こういうおいしい仕事はあまりないからな。しかしよく説得できたな」

 「君の高い技術力が必要だ、っておだてておきました。エンジニアなんて技術力を誉めておけばいいんですよ。ちょろいもんです」

 え? 越後さんってこういう人だったの? 越後さんは僕の技術力を評価してくれていたと思ってたけど、僕もおだてられてただけだったのか。

 

■黒幕はこちら

 「あの浦見の事件からもう1年か。越後君もよくやってくれたな」

 「当時の織田部長に、浦見のツイートにリツイートしろと言われたときには驚きましたよ」

 「浦見のツイートをうまく利用できたよ。『鬼のブラック企業』の言葉を流行らせて鬼野社長だけを悪者にして、こうして会社を乗っ取ることができたんだからな」

 「はい。私も日頃から『鬼野社長直々の指令なんだ。すまないけど今週中に完成させてくれ』などと社員たちに言っていました。鬼野社長一人を悪者にする体制はすでに進んでいましたからねえ」

 「そこで浦見が期待以上のことをやってくれたので鬼野と直接対決する手間も省けたよ」

 こ、こいつらが黒幕だったのか!

 僕は命を賭けてブラック企業の撲滅に一役かったつもりでいた。世論を動かしたつもりでいたけれども、実は利用されていただけだった。個人がなにかやってみても、大きな組織につぶされてしまう。世の中はそんなものなのだろうか。僕の人生ってなんだったんだろう。ブラック企業はなくならないし、この世の悪はなくならない。今も昔も。

 「越後部長、浦見のような事件が今後は起きないように気を付けてくれよ」

 「ご心配はいりません。筆者のあべっかんに賄賂をたっぷり渡しておきましたから。我々に不利な話は書きませんよ」

 「越後や、おぬしも悪よのう」

 「いえいえ、織田偉寛さまほどでは」

 「がっはっはっは!」

 (第4話 完)

 

■あとがき

 この話はフィクションです。実在する人物や他のコラムの話とは関係ありません。

 いかがでしたでしょうか。感想をコメントしていただくとありがたいです。次週は最後の第5話に入ります。その前に飲みに行ってリフレッシュしてこようっと。越後屋にもらったお小遣いで!

 

 「執筆裏話(2)」

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