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SIerはつらいよ-なぜシステム開発は必ずモメるのか?

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 「えっ、6:4でSIerのせいになっちゃうの?!」

 「プロジェクトマネジメントの落とし穴 契約マネジメントの徹底」というセミナーを聞いてきた。主催はPMAJ 日本プロジェクトマネジメント協会で、講師はIT開発に関するもめ事の裁判に関わってきたCPMソリューション(株)の高橋靖史氏。その一部を紹介する。

■契約書に書いてなくても義務がある

 IT開発のもめ事で発注者と開発者で裁判になったときは契約書の内容がまずは大事。  しかし明文化されていなくても、契約に付随する義務がある。判例では次の義務が挙がっているという。

  • SIerの説明義務
  • 顧客側の協力義務
  • SIerのプロジェクトマネジメント義務

 契約書がすべて、と思いがちだけれど、「契約書に書いてないからやらなくてもいい」ってわけではないようだ。

■説明義務と協力義務

 工業製品はメーカーが仕様を考えてモノを作る。ところがシステム開発では顧客側が仕様を決定する。顧客側とSIerが協同でモノ作りを行い、顧客側の意向や対応が大きなインパクトを与える点に特徴がある。だからSIerはシステム作りのための作業手順、ルール、不測事態発生時の対応等を説明しておかなくてはいけない。それに対して顧客側は、期日までに仕様を決めるなど協力する義務がある。

 顧客側が協力を怠ったとき、例えば期日までに仕様を決定しなかったときはSIerは放置してはいけない。「決めなかった顧客側が悪い」では裁判でも通用しない。

 SIerはシステム開発が遅れないように顧客側に働きかけなくてはいけない。これがSIerのプロジェクトマネジメント義務である。プロジェクトマネジメント義務を怠って開発が遅れた場合、「6:4でSIerが悪い」とされた判例がある。

■都合の悪い判例

 ある開発では、顧客側が次々に要求を出してきたのに対して、SIer側はすぐに費用の追加請求をしなかったためにあとでモメて裁判となった。ありがちな事例だ。

 「要求したことが当初からの追加仕様に相当するとは思わなかった。追加費用が発生するならすぐに言って欲しかった」と顧客側が主張した。これに対して「追加要求に相当するかを判断するのに時間がかかった」とSIerが言い訳した。するとその一言が墓穴を掘った。

「専門業者であるSIerが判断に時間がかかるくらいなら、専門知識を有しない顧客側が、要求したことが追加仕様にあたるかが分からないのは当然である」と判決が下った。こういった判決が出るとその後の裁判はこれにならって判決されることが多くなる。SIerにとっては都合が悪い判例が残ってしまった。

■SIerはつらいよ (以下はabekkanの感想)

 顧客のわがままな仕様変更に対応してあげたのに、顧客側が仕様を決めるのが遅れたのに、うまく説明できなかったり遅れたりしたらSIerの方がより大きな責任を被ることになる。SIerは損な商売だ。「技術工数は払うけど管理工数を見積もりに載せても払わないよ」などと言う顧客も未だにいる。だけどそんな苦境に置かれてもプロジェクトマネジメント義務は果たさないといけない。

 モメごとにならないように、あらかじめ「なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 美人弁護士有栖川塔子のIT事件簿」でも読んでおこう。

 こんな感じのミニセミナーが月に一度行われるPMAJの例会。会員でなくても2100円で参加できる。興味のある人は一度参加してみてはいかが。

 あっ、そういえばPMAJ新年度の会費を催促されてたんだっけ!

 abekkanでした。

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