診断士兼キャリアコンサルタントの元外資ITマネージャー

キャリアというレールの複線化

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 前回までの記事、予想以上に多くの方に読んでいただいたようで、大変恐縮です。ありがとうございます。

 今回は、少し本題にはいって、「キャリアの複線化と役割配分」について。

■複線化とは

 複線化、つまり、「レール」を1本ではなく複数持とう、ということ。

 バランスを取った生き方、あるいは保険をかけた生き方、ともいえるかもしれない。

 2001年、正社員に就いたものの、勤務先を2回も(1回は派遣先だけど)、立て続けに失ったことでボクは、

 「会社に依存してはダメだ」

 「明日、会社が倒産しても(クビになっても)こまらないようにしよう」

という気持ちを人一倍強く持つようになった。

 そのためには、エンプロイアビリティを高めること、が大きなテーマとなってくる(ポータブル・スキルなんていう言葉も本屋で見たっけ)。

 そしてその先には、会社に属さずフリーで、あるいは自分で独立・起業してやっていく、という視点も出てくるかもしれない。

■深化との決別

 もちろん、1本のキャリアを深めていくことは、転職が当たり前になったこの時代だからこそ、なおさら強い。

 しかし、自分はもう、最初のレールからは一度外れている身だ。

 「空白の5年」がある以上、ここから5年深めても、同じことをしていては追いつけない。いつまでたっても「クビに一番近い立場」だろう、と思った。

 そこで、仕事で生き残りを図りつつ、「他のこと」も模索した。英語、投資、資格取得、キャリア・コンサルタント……。マッサージ師になる修行をしようと思っていた時期もあった。

 たくさんのことに手を出した結果、今はいろんなことをやっている自分がいる。

  • 会社では、社内ITの管理職としての役割。もっと言えば、上司にとっては部下だし、部下にとっては上司の役割だ(嗚呼……中間管理職)
  • 家庭では夫として、飼っている猫に対しては親(飼い主)としての役割
  • 所属するNPOや、一部のクライアントにはキャリア・コンサルタントとして
  • 経済産業省的(?)には、中小企業診断士
  • 昨年からはミュージシャンとしての活動も再開

■複線化の功罪

 「選択と集中」とはほど遠く、中途半端なことばかりしている、といわれても仕方がない。専門性、という点では、大きく分が悪い。

 仕事面でも、業務系アプリにかかわっている、ぐらいの共通点しかなく、業種、システム(会計、在庫、人事、予算……)、立場などバラバラだ。

 それでも、興味があることに、積極的にかかわることで、会社や家庭とは、まったく異なるコミュニティに属することができた。

 特に、診断士になってからは、そのコミュニティの中で、たくさんの素敵な人に出会えた。異なるバックボーンを持ち、経営的な視野を持っている人たち(独立している人も多い)と話すことは、とても刺激になる。

 「資格だけでは食えない」とはよく聞くことばだけど、エンプロイアビリティを高めるにはプラスの側面もあり、精神的な会社依存を少なくする、という点を含めて、そこでの出会いから得られる経験は大きい(最近、資格学校も盛況だとか)。

 また、いまの仕事に対する2つめの柱、として何か1つに注力してこなかった点。これは、自身のあきっぽい性分のせいかもしれないし、1つに集中して2本柱にした方が、「いまの仕事に対するオプション」としては、有望だったのかもしれない。

 ただ、結果として思うのは、何か1つに集中するのではなく、診断士、音楽、キャリア・コンサルタント……など、異なる経験の組み合わせが効果をだすこともある、ということ。

 「歌う診断士」こと庵谷賢一氏と「診断士ユニット」KEN46を組んで受験生イベントで演奏をしたり、なんかもその1つ。

 音楽を、たくさんの人に聴いてもらう機会を持てたのは、診断士ユニットだったから。組み合わさった結果、オンリーワンになれたということ(そのニーズは不明)。

■ライフ・キャリア・レインボー

 数々のキャリア理論で有名な故ドナルド・E・スーパーは、

 「キャリアとは人生のある年齢や場面の様々な役割の組み合わせである」

と述べて、下記の8つの役割をあげている。

  1. 子ども
  2. 学生
  3. 職業人
  4. 配偶者
  5. 家庭人
  6. 余暇を楽しむ人
  7. 市民

 幼年期の子どもからスタートして、子ども+学生へ。

 そして就職後は職業人+市民(+家庭人)~結婚すれば、配偶者としての役割が追加され……。

 それぞれの役割が、その時々に太さを変えて、虹のように折り重なる。この姿から「ライフ・キャリア・レインボー」と呼ばれるキャリア理論だ。

 図入りの参考サイトはこちら

■役割配分の理想と現実

 上記の8つの役割を応用して、自分が現在果たしている(求められている)、または果たしたい8つの役割をリストアップし、それぞれの理想とするバランスを、合計が100%になるようにアサインしてみると、

役割 理想
1:会社員 40%
2:中小企業診断士 15%
3:キャリアコンサルタント 10%
4:家庭人 10%
5:学ぶ人 10%
6:ミュージシャン 5%
7:余暇を楽しむ人 5%
8:市民 5%

 例えばこんな感じ。将来的にはもう少し余暇も楽しみたいけど……。

 つぎにその横に、現在のバランスを書いてみる。

役割 理想 現実
1:会社員 40% 65%
2:中小企業診断士 15% 10%
3:キャリアコンサルタント 10% 3%
4:家庭人 10% 5%
5:学ぶ人 10% 10%
6:ミュージシャン 5% 2%
7:余暇を楽しむ人 5% 5%
8:市民 5% 0%

 予想していたとおり、いやそれ以上に会社に時間をとられている……ということがわかった。

 睡眠時間を削って他のことに費やしている、のが実感だ。

■ギャップ認識→アクション!

 それでも、この理想と現実のギャップを認識することで、是正のためのアクションを取ることができる。

 例えば、先週ボクは、上司との面談の際に

 「契約社員にしていいから、週4日勤務にしてほしい」

といった、「会社員」の役割に費やす比率を減らすための、いろんな提案を持って上司に願い出たわけですが……いまだ不成立。

 でも、とりあえず

 「1日も有給を取っていないんだから、ちょっと長い休みでもとったらどうだ」

といわれました。アクションがなければ得られなかったわけですから良しとします。

 それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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Comment(6)

コメント

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おっと!現実の「ミュージシャン」の項が「22%」になっていますが、
これは「2%」のまちがいです・・・足し算があやうくてすいません。。

@IT自分戦略研究所 編集部

@IT自分戦略研究所 編集部です。
「22%」を「2%」に修正しました。

stcm

キャリアの複線化、大いに共感できます。
私もITエンジニア+介護ヘルパー+投資家という
複数のキャリアを積みかさねております。
これは、2000年前後のリストラブームで早期退職していく
年配の方々をみて、もう終身雇用の時代は終わったと感じたからと
収入の複数持つことが不況への対策になるとの考えからでした。
コラムにもあるように、
1つのキャリアを深めている人には勝てないかもしれませんが、
今は40代・50代になったとき、
相乗効果がでると考えています。

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stcmさま

コメントありがとうございます。
stcmさんも複線化を図っているとのことをお聞きして、
やはり同様の考えを持ち、実行している人がいるんだなぁ、と感じました。

備えあれば憂いなし、だけでなく、異なる線への本線切り替え、
というオプションを、ゆくゆくは本線にも生かしていきたいものですよね。

今後ともよろしくお願いします。

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tanakan

こんにちは

私も一つの柱に依存するのはマズイと考え、中小企業診断士の勉強をしています。
自分が目指す資格をお持ちで、人生成功されている方を見ると励みになります。
キャリアの複線化、参考になりますね。

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tanakanさま

こんにちは!コメントありがとうございます。

診断士の勉強をされているんですか!
取ってからもおもしろい資格ですので、合格に向け、ぜひがんばってください!

・・・人生の成功にはまだ遠いですが、刺激が多い人生を歩んでいるつもりです。。

今後ともよろしくお願いします。

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