いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

銀の弾丸を人に向けるな

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銀の弾丸はある

システム開発で「どんな問題にも有効な手段」を銀の弾丸に例えるのを聞く。誰が最初に銀の弾丸なんて言い出したかは知らない。そんなものがあるなら是非手にしてみたいものだ。ただし、仕事なんかに使わない。もっと人類が抱えてる大きな問題に対して使いたい。それで、パッとノーベル賞でも取って人生を安穏と過ごしたい。たかが仕事の一プロジェクトで銀の弾丸を求めるなど器が小さい。

そんな夢物語みたいな代物だが、あると言えばある。ただし、みんなが使っているので逆に分からなくなっている。人類の歴史を見れば、飢えに対しても全世界の人が食っていけるだけの食料を生産できるようになった。地球の裏側にだって一日そこらで行けるようになった。インターネットで全世界の情報にアクセスできる。過去の人類から見れば、銀の弾丸を詰めたマシンガンみたいなものだ。

人類は化学や工業で過去のあらゆる困難をことごとく解決した。これって、銀の弾丸じゃないか?みんなも大好きだろ。化学的な思考やら、工業的発展。これを使う事で、未来永劫人類が発展してあらゆる問題を解決していくと微塵も疑わないだろう。ITエンジニアなんて仕事があるのも、みんなが大好きなプログラミングができるのもコイツのお陰に他ならないだろう。

銀の弾丸はある。しかもかなり身近に。確かに個人レベルで行使できる力ではないが、集団という単位、国家という単位、人類という単位では確かに実在する。しかも、誰もが認める疑いようの無いものだ。化学やら工業に加えて、金の力も加えてみよう。逆に解決しない問題の方が少なく思てるんじゃないだろうか。もっともお金に関しては、それ単体で「金の弾丸」にしてあらゆる問題も解決してくれそうじゃないだろうか。

矛先の向く方向

銀の弾丸はある。だが、なぜ目の前の炎上プロジェクトは解決しないのだろうか。答えは簡単だ。狙いがそちらに向いていないからだ。炎上案件一つ、解決する方法などいくらでもある。それでも解決しないのは、そこで働いている人がどうあれ、それに携わる人が炎上していても問題が無いからだ。あなたが炎上案件で阿鼻叫喚の地獄絵図を見ようと、私はお茶を飲みながら優雅にもみじ饅頭を頬張る。

それはあなたも同じはずだ。私が炎上案件で阿鼻叫喚の地獄絵図を見ていようと、鼻をほじりながらピザでも食べてる事だろう。私が発狂する一歩手前まで追い込まれても、屁でこきながら尻をボリボリかいている事だろう。そのくらいに、人の痛みに対して鈍感なのが現代の日本人だ。とりあえず、自分が安穏と暮らせるのであれば、その他大勢は好きにしてくれというスタンスだろう。

全体で見ると、炎上案件を忌み嫌うが解決する意思は無いという事だ。自分に能力があれば問題解決できる、自分がもっと頑張れば問題解決できる。そう考えるかもしれないが、目の前の問題の原因はもっと大きな流れで起きている。個人の努力だけで解消しようとしてもなかなか難しい。ただ、個人の能力や努力を否定するというのではない。もっと大きな流れを見ようという意味だ。

実際、炎上案件であっても儲かるところは儲かる。炎上しようと給料が保証されている人はたくさんいる。解決しようと必死になるのは、既に渦中に巻き込まれ苦しんでいる人たちしかいない。銀の弾丸はある。だが、それを行使できる人は、目の前の炎上プロジェクトに使おうとはしない。もっと素敵な使い方があると夢を見ながら、懐で銀の弾丸を温め続けている事だろう。

銀の弾丸は人に向けられる

問題が起きると人は銀の弾丸を他人に放つ。簡単な話だ。もしプロジェクトがうまくいかなかった時、会社はマネージャに対して銀の弾丸を放つ。マネージャは確実にダメージを受ける。ダメージを負ったマネージャは、自分のメンバーに銀の弾丸を放つ。メンバーが確実にダメージを受けてプロジェクトが炎上する。問題を解決できるだけの力が人の攻撃に使われるからプロジェクトは炎上する。

例えば、素晴らしい技術を持つA社とB社があったとしよう。お互いがシェアを確保するため、相手に銀の弾丸を放ったらどうなるだろう。先に弾丸を打たれた方がダメージを負う。実際は、お互いの弾丸が当たって双方大きなダメージを受けることが多いようだ。まぁ、これがみんな大好きなビジネスの実態だ。早く相手に致命傷を負わせた方が勝つ。だからビジネスはスピードなのだ。

これだけ化学が進歩して、世の中に便利なものが溢れているのに、何で目の前の炎上プロジェクト一つ消し止められないのか。それは、銀の弾丸が他人に使われるからだ。効果絶大な武器をお互いで向けあったら、無傷でいる事の方が難しいだろう。確かにこういうパターンに当てはまらないような人たちもいる。彼らは見た目はどう映るか分からないが、マイペースに楽しくやっているようだ。

これ以上掘り下げると、何やら精神論っぽくなるのでここら辺で止めておく。このコラムを読んでいる人の求めているのは、「だったらどうするんだよ」の部分だと思う。こういう実情を踏まえてた上で、エンジニアとして成果を得る方法はある。ただ、単に技術だけでこの状況を打開しようと思えば百万人に一人くらいの才能を駆使しないと難しいだろう。それよりも、炎上度合いの少ないセクションを運で引き当てる方が確率は高い。

強力な武器への対処の仕方

会社が個人に与える影響は絶大だ。まさに、会社は個人に対して銀の弾丸を持っている。これに対抗する有効な手段は、実績のあるものが二つ思い浮かぶ。一つは団結してデモを起こす。外国ではよくやってる。実際に効果も上がっているが、日本では無理だろう。もう一つは全力で逃げる。少なくとも、身の危険を感じるレベルの無理難題を押し付けられたら実行に移そう。

逃げるなど、アホな事を言うなと思うかもしれない。だが、もしみんなで一致団結して会社を辞めたらどうなるだろう。会社にとっては、正に銀の弾丸を打ち込まれたようなダメージを受ける。銀の弾丸を行使するには、数の力が必要なのだ。問題解決等、ロジックを語る人に欠けているのはここだ。理屈より数の力で押し切る方が強い。味気ないが現実はそういうものだ。

エンジニアなら、自分が鍛えてきた技術力で問題解決をしたいところだろう。もしくは、実績を見せつけて状況を覆したいところだろう。だが、だいたいの場合そんなものは見られていない。戦いは別のステージで行われている。誰も見ていないのに、技術を磨いて「これで問題解決だ!」といきんでも問題解決できるわけがない。多くのエンジニアが犯す間違いが、技術と実績だけで問題解決できると思い込むことだろう。

問題解決というのは、時に思いもよらない方法で実現できてしまうことがある。そもそも、簡単に思い当たる方法で解決できるような問題は、そんなに大きくはならない。大きくなる前に解決できてしまうからだ。技術で問題が解決しないなら、もっと別の切り口から物事を見てはどうだろう。状況や抱えている問題によって答は違うと思うが、人を攻撃しても問題は解決しない。これだけは確実そうだ。

Comment(1)

コメント

hogehoge

銀の弾丸の元ネタは『人月の神話』ですね。
プロジェクトマネジメントの古典的名著といわれる本ですので、一読してみることをオススメします。

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