いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

【書評】オライリーの書籍と「マンガでやさしくわかるプログラミングの基本」を読み比べてみる

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この本についてちょいと解説

 先日、編集部さんよりご紹介いただきまして、「5分間キャリア・コンサルティング」でお馴染みの高橋さんの新著「マンガでやさしくわかるプログラミングの基本」を読ませていただいた。感想を一言で言おう。これは構成がしっかり練られた一読の価値がある本だ。

 この、「マンガでやさしくわかるプログラミングの基本」だが、表紙にオネーサンのイラストが大きく書かれている。最近、綺麗なお姉さんが会社のマネージメント任されたり、ドラッカー読んだりと、そういう本をよく見かける。可愛い女の子に難しい事させることで、難しさのハードルを下げようという手法だろうか。成功哲学の本でよく見るパターンだ。

 中身をパラパラ見ると、大きく漫画パートと説明パートに別れる。漫画で軽く内容を流して、その後に説明パートでがっつり文章が書いてある。内容的には、漫画と文章で同じ内容が二度書かれている。単純に内容だけ見れば、同じ厚さの本の二分の一だ。これをどう取るだろうか。

 多分、本をじっくり読まない人にとっては、内容の薄い本と感じることだろう。だが、普段から本をじっくり読む人であれば、気づくと思う。文章のパートだけ抜き出して読んでみると、オライリーの書籍と似たような書き方になっている。どういうことかというと、非常に流れを意識した文章の構成になっているのだ。

オライリーの書籍と比べてみる

 実際にオライリーの技術書をいっぱい読んでいる人からは、「何を言ってるんだ?コイツ。」と思われるかもしれない。だが、オライリーの書籍を何度も読み返すような人なら言っていることが分かると思う。オライリーの書籍には流れがある。単に手順や仕組を並べただけの書籍ではない。

 日本のIT系の専門書は、どうしても手順や操作概要に内容が偏る傾向が強い。書籍というより、説明書的な書き方に近い。操作をする前提条件、背景や事例などがあまり書かれない傾向がある。辞書のように使うには便利だが、体系立てて技術を覚えるには使いにくい。

 その点、オライリーの書籍は操作をする前提条件、背景や事例などが多く盛り込まれている。この、「マンガでやさしくわかるプログラミングの基本」も、オライリーの書籍と同じように、前提条件、背景や事例などが多く盛り込まれている。そのため、プログラミングというものが非常にイメージしやすい。こういう文章は、技術的なバックボーンがしっかりした人でないと、なかなか書けない。

 多分、漫画が入っていることや、どこぞの成功哲学本と似た装飾パターンを使っているので、「いかにも初心者向け」という印象を受けるかもしれない。だが、中身をしっかり読めば、十分な内容がある事に気づくはずだ。もちろん、揚げ足を取ろうとして読んでもこの本の良さは分からない。学ぼうという気持ちを持って読めば、相応のスキルを持ったエンジニアでも得られるものはあるだろう。

おまいら、きちんと本読んでるか?

 特にこの本は、やたらとオライリーの本を読もうとする層にお薦めしたい。この本を何回か読めば、あの手の技術書の読み方が分かるようになると思う。オライリーと似たような構成の文章と、同じ内容の漫画が組になっている。文章と別角度から見た内容を照らし合わせることができ、読解力を鍛えることができる。

 本の構成もそうだが、扱っている内容についても同じことが言える。確かに、この本で扱っている内容は、ごく基本的なところだ。実務に携わっているエンジニアであれば理解することは容易いだろう。だが、理解はできるかもしれないが、内容が固まっているだろうか。そういう基礎を見直すには良い書籍だ。

 オライリーを読んでいる人によく見かけるのだが、高い技術が欲しいが故に、自分の身の丈に合わない高度な内容の技術書に手を出す人がいる。難しい本を頑張って読めば、相応の充実感は得られるだろう。だが、そこで終わってしまっているのだ。内容の難易度についてこれず、読んで終わりになってしまうのだ。

 高度な技術をモノにしたければ、自分の理解できる範囲の技術書を何度も読み返すことをお薦めする。確かに、周りに対してアピールとしては弱い。だが、基礎を固めないとその上に高度な理論を積んでも簡単に崩れてしまう。そういった、高度な技術に先走る人ほどこの本を何度か読み返して、基本を見直してみてはどうだろうか。思わぬ躍進への一歩に繋がるかもしれない。

人に教えられるようになりたい人に一押し

 この本は、新人研修に活用するのにかなりお薦めだ。ただ、読ませるのではなく、ぜひ読んで欲しい。なぜなら、読ませる前に自分が理解していないと、思わぬところでボロが出るからだ。内容は既にご存知のものも多いかもしれないが、説明できる形に整理するのに役に立つだろう。

 できればこの本、漫画部分だけのものと文書部分だけのものを別々に入手できると便利だと思う。新人研修に使う際に、漫画だけの部分を使用すると使いやすい。慣れた人には文書部分だけ渡せばOKだ。電子書籍でもそういうのを作ってみてはどうか、なんて思った。

 最後に、漫画の部分についても触れておきたい。作画の傾向として、基本に忠実な作画と感じた。。女の子の可愛さで押し切らない真面目さを感じる構成になっている。社内で読んでいても女子社員から引かれないくらいに、絵柄が配慮されている。特筆すべきは、脇役の個性がきちんと表現できているところだ。渋い中年が書けるのはポイントが高い。

 ツッコミをいれるなら、社長が某バスケ漫画の安西先生に似ている。「諦めたらそこで試合終了ですよ?」と言わせたら著作権的に冒険になっただろう。最後の方で「私はこの仕事がすごく好きみたい!(太字)」という主人公のセリフがある。今の自分と照らし合わせて、少しため息が出てしまった。今の現場でそれを言えない状況なのが辛い。

 この本を読んで、「私はこの仕事がすごく好きみたい!(太字)」と言える人が増えてくれると良いなと思いました。

P.S.

エニア(表紙に載ってる謎の生命体)って、妖精なのか?なんかのシステムで作った擬似生命体なのか?本作であまり触れられていない。多分、シリーズ二冊目は、エニアの出生の秘密にせまる「マンガで優しく分かる人工知能の基本」を期待したい。若き頃の社長が、人工生命体の創造の過程で人工知能について学んでいくストーリーだろう。高橋さん、次回作期待しております!

Comment(1)

コメント

キャリアコンサルタント高橋

Anubisさん、


お邪魔します!
書評、ありがとうございました!!


拝見させていただいて初めて気づいたのですが、確かにオライリーの構成に近づけている所があるなぁと感じました。
もちろん、書いているときは全く考えすらしませんでしたが、私もオライリーを良く読んでいましたので、ひょっとしたらその構成が頭の中に入っており、無意識で出たのかもしれません。
本気でドキっとしていました(汗


また、マンガについてご感想をいただいておりますので、マンガネタをいくつかご紹介させていただきますね。


まず安西先生ですが、マンガ家さんからキャラ案があがってきた時、案の定、関係者全員が『安西先生だわ』になりました(笑)ですが、妙にしっくり来たのでこのままにしてしまいました。。。


次に、主人公のおっ〇いですが、いろいろ話し合いをした結果、少し控えめにさせていただきました。ひょっとしたらAnubisさんからお叱りがあるかと思い、ビクビクしておりました。。。
ですが、その代わり、八神のおっ〇いで挽回させていただいております!


実は女性のキャラ像は結構緻密に考えており、洋服のデザインから髪型、スタイルに至るまで何パターンか用意し、どの読者層に刺さるか?といったことを考えました。最初、マイミはリクルートスーツを着せていたのですが、リクルートスーツを着て開発現場にいる女性ってあまり見ないなぁということで、元気さをアピールするポイントとしてキュロットスカートを着せています。その対比として八神はある程度落ち着いた感じを見せるため、スーツで固めています。ただ、それだけだと堅苦しいので私服も用意してもらいました。


最後にメンター(先生)役のエニアですが、この子が妖精なのかロボットなのか…今となっては良くわからない存在になってしまっていますが、最初は近未来のAR技術で作られたロボットのような設定にしていました。ディスプレイやモニタの中にあるコンピュータ世界の住人のような設定で、現実世界には出てこられないようにしていたのですが、これだと動きが狭まるので今のような設定になりました。技術って凄いですね(汗


また、エンディングシーンについてはいろいろ議論しました。中にはドラ〇もんの最終話で出てくるようなマイミが成長して…という案もあったのですが、あまりにも類似性が高すぎたので、結局今のような終わり方にさせてもらいました。もし、次作があればエニアのサイドストーリーのようなモノも考えてみますね♪


Anubisさんに分析していただいたことは本当に嬉しいです。コラムニストをやらせてもらってて本当に良かったなぁとしみじみ思いました。


ありがとうございました!

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