いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

スキルアップよりチェンジ・ザ・ワールド

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スキルアップの現実

 エンジニアが優れようと思ったら、必ずスキルアップについて考える。当然と言えば当然だ。で、スキルアップって何なんよ?最近、ふと疑問に思うようになってきた。確かに、エンジニアをやる上でスキルは重要だ。だが、私が本当に優れていると思う人には、スキルだけでなく別の何かがある。

 その何かというのが、非常に言葉で表しづらい。単なるスキルだけで見れば、同等の人はいくらでもいるのだが、それ以外のプラスアルファがあるのだ。そのプラスアルファの要素をどうやって手に入れたのかが気になる。

 ちなみに、その凄い人たちが仕事で活躍しているかというと、そうでもない。むしろ、苦戦している。スキルが高いがゆえに、普通の人がスルーするような問題に気づいてしまう。普通の人はスルーしてしまう問題だ。話しても理解できる人は限られる。

 仕事ができるようになってスキルが上がるというより、普通の人が踏まない地雷を踏んでしまうが故に、人より多くの課題が突き付けられる。問題解決に取り組んでいるうちに、勝手にスキルが上がった。そんな感じだ。

仕事を上手くこなすのとスキルアップはイコールではない

 普通の人は、スキルアップすれば仕事ができるようになると考える。だが、スキルの高さと仕事の成果は必ずしも比例しない。仕事を上手くこなしたいなら、スキルアップより人間関係を見よう。もしくは、何らか仕事に関するノウハウを独占しよう。これができれば、「仕事ができる」と皆から言われるようになる。

 一般的に言われる「仕事ができる」とは、そういうものだ。確かに不条理ではあるが、これが現実だ。スキルアップだけではそういう「仕事ができる」という評価は得られないと思った方がいい。得たいものに対して手段を間違えていては、どれだけ頑張ろうと結果は出ない。

 これを踏まえた上で、それでもスキルアップしたいか?現実は、スキルアップするほど多くの問題が見えてくる。その分、背負い込むものも増える。問題の難易度が上がるので、苦労も増える。普通の人が見ないような深い部分を見るようになるので、話が通じる人も減る。 

 スキルアップといっても、実際はトレードオフだ。人生における限られた労力を、友人関係に使うか、上司との関係に使うか、技術を得るために使うか。その選択でしかない。どう使っても得らるものは得られる。得たものの価値は、選んだものと、その人の価値観次第だ。

それでもスキルが欲しいか

 スキルアップは仕事のできるかできないかに関係は無い。人間関係ができていない状態で変にスキルが高いと、逆に無理難題を押し付けられて潰れる。ぶっちゃけ、自分の人生を安穏と生きる手段としては、スキルアップは役に立たない。むしろ邪魔だ。

 スキルアップが実現できない人の大半が、ここを間違えている。仕事ができるようになりたければ、仕事だけを見よう。スキルなんて、一定水準あれば十分だ。客やお偉いさんは、実質なんて見てくれない。それが今の世の中というものだ。

 実質を理解できない人に評価を委ねて努力しても、結果など出るはずが無かろう。だからいくら頑張ってもスキルアップができないのだ。仕事とは全く別の基準を設けないと、実質は見極められない。

 スキルアップとは、あくまで現実の追求だ。スキルが高いというのは、不可能が可能になるということではない。できる事とできない事が明確になるだけだ。また、スキルというのは、欲しいものがポンと作れる能力でもない。欲しいものを作る道具が揃った。ただそれだけの状態だ。

 スキルアップに夢を馳せるのはそれぞれの自由だ。だが、現実は現実だ。馳せた夢とギャップがあれば、当然ながら実現しない。それでもスキルが欲しいか。自分自身を問いただしてはどうだろうか。

スキルアップの本当の意味

 仕事の役に立たないなら、スキルアップなんて意味ないんじゃないか!と思う方もいるだろう。全くもって、それは正しい。仕事に関しては意味が無い。スキルアップの本当の意味は、現実を見極めることだ。

 今の時代、信頼なんて嘘とごまかしでいくらでも築ける。事実、実力が無いのに高い地位に就いている人なんて腐る程いる。収入が欲しければ、死ぬ気で媚びろ。大企業で無難に稼いでいる人は、だいたいそうやっている。

 スキルアップとは、そういう歪んだ時代の中でも嘘をつかずに生きていくための手段だと考えている。今の時代、こういう考え方にあまり価値は置かれていない。「そんな事より、言われた通りに仕事しろ」で一蹴されて終わりだ。

 ただ、本当に優れていると思える人には、こういう理念のようなものがある。それが、優れていると思う人が持つ「何か」だ。実質を見極める事を念頭にスキルを磨いている。だから、本当にスキルの高い人は尊敬できる。仕事ができるからではなく、真実を追求する人だからだ

 単に仕事ができるではなく、本当の実質を見つめる人が増えてくれたら、きっと今より住みやすい世の中になってくれるんじゃないだろうか。本当の意味でスキルアップをしたいなら、自分が見ている世界観から見直す必要がある。世界観が変われば、見える世界も違ってくる。

そう。だから、スキルのステップアップよりチェンジ・ザ・ワールドなのだ。

Comment(3)

コメント

うず

示唆に富みますね。

Mc

納得したいけど納得できない自分がいる、そんな気分です。
時々読み返したくなる記事。

天狗の高下駄

インフラエンジニアが陥るスキルアップの罠:(自分がインフラエンジニアなのでこれしかわからない)

技術的にも対顧客コミュニケーション的にもスキルが付いてくると、目立ったトラブルや遅延がほとんど発生しなくなる。(逃げに入っているとも言えるかも知れない)

上司への進捗報告が(トラブルがないので)定型的になり上司の印象に残りにくくなる。

勤務時間(工数)もトラブルを起こしている案件より明らかに少なくなる。(本来は適正な工数なのだが)

結果、一緒に案件に携わったメンバー以外、上司含め周囲から「簡単な仕事ばかりしやがって」「俺たちはこんなに苦労しているのに」と言った右斜め上な評価をもらうことになり、窓際へ追いやられるか、周囲と同じぐらいの残業時間になるまで仕事を上乗せされるかと言った事態に陥りやすい。

安易にスキルアップを図る前に、まずは自分の周りの人間関係を固めておいた方がいいかもしれない。

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