いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

あなたを悩ませるWordファイル

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■1GBのWordファイル

 先日、Sphinxというツールの勉強会に行った時、Wordファイルの話題が出た。Sphinxとは、Rest方式で記述したファイルからいろいろな形式のドキュメントを生成できるツールだ。

 ツールの用途ゆえに、ドキュメントの作成について造詣が深い方が集まっていた中、1GBのWordファイルという話題が出た。「1GBのWordファイルを編集するのが辛くてしかたない」という話だ。

 非常に興味のそそられる話だった。どうやったらそんなWordファイルができるか想像がつかなかった。デジカメの画像をそのまま貼り付けて編集しまくったのだろうか。それとも、Visio等の別ソフトからコピペをしまくったのだろうか。とにかく謎が多い。私が今生巡り合った最悪のWordファイルはせいぜいが数十MBだった。やはり、世界は広いものだ。

■エンジニアの心をへし折るWordファイル

 Wordファイルは時に、エンジニアに甚大な精神的打撃を与えるようだ。Excelで作成していれば、効率は劇的に落ちるがなんとか手数でごまかせる。だが、機能を知らずにWordを使うと、いろいろとぶっ壊れる。

 そう、Wordのファイルは壊れるのだ。最近のバージョンでは改善されているのかもしれないが、めちゃくちゃな使い方をすると、挙動がおかしくなる。納期の迫った状態で挙動不審なファイルの修正が要求されると、エンジニアの心がボキボキ折れる音が聞こえる。

 なんとなく、みんなWordを使いたがらない理由も分かる。Wordはごまかしが利きにくい。やたらでかいフッター、ヘッダーを付けたり、意味不明な外枠を付けるのが難しい。安易な発想が通じないのだ。安直な発想をするエンジニアがWordを使うと、「ボキッ」と背骨みたいなのが折れる音が聞こえる。

■Sphinxの勉強会で聞いた気になる一言

 Sphinxでドキュメントを生成する場合、最初に構成ファイルのようなものを書く。つまり、文章を設計する必要がある。私のように文章をよく書く立場としては当たり前の作業だ。だが、登壇していた方は「普段考えないことを考えなければならない」と付け加えていた。

 逆を取ると、一般的なエンジニアはドキュメントの構造を考えずに書いているとも取れる。経験上、そういう人とは多く会ってきた。例えば、ドキュメントのレビューの時、お客さんに目次(Excelで作った手打ち)を見せて「構成はこんな感じでいいでしょうか?」と聞いている。

 お客さんは分からないからドキュメントを求めているのだ。そこはきちんと自分たちから打ち出すべき項目ではないだろうか。それをお客さんにお伺いを立てるのは仕事としていかがなものだろう。聞いたところで、お客さんが分かってるつもりになって的外れな指摘をするだけだ。そういうやり方をしているプロジェクトは、経験上、必ず炎上している。

 エンジニアといっても、文章を書いたりドキュメントをまとめることに関してはプロではない。コードが理解できたとしても、イコールドキュメントが書けることにはならない。そういう認識に欠けてはいないだろうか。 必要ならしかるべき訓練をしておくべきだ。

■ツールではなくやり方

 こういった情報連携やドキュメントに関する問題に直面すると、ツールに関する話が持ち上がる。だが、これらは全部無駄だと考えている。問題が起こる原因は、考えるべき要素を抜かしたから起こるのだ。ツールに責任転嫁するのは違う。

 優れたツールは、優れた人が使って初めて役に立つ。幼稚園の子にPhotoshopを使わせても良い絵は描けないし、Redmineの環境を渡してもプロジェクト管理はできない。ツール自体も、前提知識や技術があることを前提に設計されているからだ。

 冒頭、1GBのWordファイルの話をした。1GBのWordファイルができたから悩むのでなく、悩んだ末に1GBのWordファイルができたように思う。使い方も知らないツールを適当に使ったら、どこぞの遺跡から掘り返したようなオーパーツができても無理はない。

 どんなツールを使うにしても、前提になる知識や技術は必要だ。こういう仕事とは直接関係しない部分の教育は抜けやすい。スキルを上げれば活躍できるように思っている人も多いが、こういう根本が抜けると効率が劇的に落ちる。注意したいところだ。

Comment(4)

コメント

アーナッキ

上っ面だけでソフトを企画、販売しているMicrosoftの犠牲例。っていうか、一太郎という機能面とは別の意味で商業的に成功したソフトの二匹目のドジョウを狙ったのがwordだということらしい。まだあの時代は手書きの代わりというレベルで目的がカバーできていた時代だが、さすがに2000年代となると「ワードプロセッシング」という手書きの次の機能が求められてきていた。しかし、wordというかマイクロソフトという会社にはDTPどころか、ワードプロセッシングというものがどうあるべきかを理解している人材などいるはずもなかった。当然だ。他所から買ってくることは知っていても、ゼロから開発するという力量はなかったのだから。金にモノを言わせてアルダスを買収してくれていたらさぞや素晴らしいワープロソフトになっていてくれただろうに、プレゼンソフトに先に手を出しちゃったところでつまずいてしまった。

ksiroi

word滅ぶべし。wordは須らく例外なく一片の塵も残さず絶滅すべし。
運用でwordを使うなど狂気の沙汰。excel使え。

Anubis

そうですねぇ。確かにMSのオフィスはぼったくり感がありますね。
操作さえ覚えれば、LibreOfficeの方が利便性は高いです。

CXM

ちょっとしたレポート書くときだけWordです
罫線なし、図なし、段組みなし

なんだ、ワードパッドで十分ですね

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