いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

未知の問題への対策

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■許されぬリスク

 ビジネスをやってる人であれば、必ずリスクに対して対策を立てる。考えうるリスクをリストアップして、一つ一つに対して対応できる方法を考て、前もって準備をしておく。これが常識だろう。ただ、この考え方に疑問に思う事がある。

 リスクに対しての対策が、言い訳の布石になっていないだろうか。リスクに対して適切に対応をすることは必要だ。しかし、過剰にリスクを避けすぎてはいないだろうか。確かに、損失を被るのは愉快ではない。しかし、リスクを避ける事に注力しすぎて、本来やるべきことを見失う。そんなケースがIT業界で多く見られる。

■考えるという落とし穴

 インフラ系のシステムでは、必ずシステムにトラブルが起こる事を想定してシステムが組まれる。しかし、トラブルの対応訓練というのは聞いた事が無い。多分、そういう発想が浮かばないのだろう。実際にトラブルを目の前にして対応できるかは別問題だ。トラブルに対しては必ず判断が必要になる。この判断の部分で多くの人が躓く。

 リスクへの対策として考えることは重視されているが、意外と経験というのは軽視されているように思う。そもそも、経験がなければまともな発想など浮かばない。とはいっても、一人の人間が何から何まで体験することはできない。なので、訓練によって仮想的に経験したり、コミュニケーションによって経験を共有するというのは大事なのではないだろうか。その上で考えてこそ価値があると思う。

■それでも避けられないリスク

 ただ、どんなに対策を立てたとしても避けられないリスクはある。予知能力がある人でも無い限り、自分の考えつく範囲のリスクに対してしか対策は考えられない。また、平穏な状況が続くと、どうしても油断が生じる。これが、トラブルへの対応力の低下や、新たなリスクに繋がることがある。

 結局のところ、どんなに頑張っても一定量のリスクはついて回るのではないのだろうか。そして、必ず一定量は経験しなくてはならないものだと思っている。リスクに対して一番の解消方法は、実際に損害を受けてリカバリする事だと思っている。

■リスクへの考え方

 リスクは小さい内に解消しておいた方が楽だ。そして、大きなリスクも小さなリスクの積み重ねだ。日々、小さいリスクを解消しておけば、いざという時に振りかかるリスクは軽減される。避けてばかりいると、借金のように積み重なっていき、いざという時に大きなリスクが降りかかってくる。

 リスクの対応方法で一番大事なのは、リスクを受け止める覚悟ではないかと思う。気持ち的な部分を固めないと、逃げの発想ばかり出てきて、リスクに向き合う事ができない。

 リスクとは悪い事ばかりではないと思う。リスクがあるから人は考えるし、何かやろうと考えたり、奮起する。苦い思いをするから成長できる。損害を被るのは確かに辛い。しかし、超えることができれば得られるものはある。ただ避けるのではなく、うまく付き合っていくことが大事だと思うのだ。

 

 

Comment(1)

コメント

仲澤@失業者

「プログラマは隕石の落下を止められません。」
と説明しなくてはならない時があります(vv;)。

生のTCP/IP通信をコードしていると
「通信が途絶えないようにしてほしい」
と依頼されることがあります。

いつものことなので、いい加減説明するのもうんざりなのですが、
物理的原理的な理由を述べて「できません」と答えます。
ネズミがケーブルを齧ったり、隕石が落ちてきたりするのは止められないのです。

このように「事故」とその結果の「被害」がごっちゃになった要求は、たまにあります。
あたりまえですが、通信内容自体はある程度は保護できるわけですね。

そう説明すると納得してもらえるので、
個人的には「リスクのクスリは減災」だと思ってます(笑)。

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